I BUKI
雨籠もり2026年7月20日1,000〜5,000字 私は兵器である。大量殺戮兵器である。数多ある生命のすべての根も葉もを腐らせて断つ兵器である。踊るように大地を荒らし、歌うように砲弾を吐き出す、私は兵器である。名前はまだなく、代わりに皆は私のことを、デウス・エクス・マキナと呼ぶ。蚊と同じ構造だよと私に時々話しかける。蚊は人間の二酸化炭素を探知して血を吸いにやってくる。それと同じことで、私もまた、人間の呼吸を探知して砲弾を吐き出す。二酸化炭素排出が確認できなくなるとようやく、私の仕事は終了する。
探知。
排出。
探知。
排出。
不発。
探知。
排出。
谷のまうえにあって全体を見渡せる三百六十度稼働のメインカメラは走っていく人間の姿を感知できる。ズームダウン・アップは全自動。サーモグラフィで温度を探知することもできる。探知して殺す。探知。排出。吹き飛ぶ脳漿。けれど私が機械である以上、経年によって劣化は始まってしまう。それはどうしようもない宿命だった。探知。排出。不発。探知。排出。不発。弾が当たらない。サーモグラフィ。探知できない。避けられる。逃げられる。攻め込まれる。
そうして私は、人間の所有物と化す。
殺しても殺しても同じようなのがまたうようよと増産される。人間の持つ繁殖という特性は異様に執拗で何千年にも渡って私との勝ち目のない戦いを続けてきた。人間の意志には耐久性能があるらしい。それが別人であっても、別人の息吹であっても、人間たちはことさらに粘り強く抵抗を続ける。息吹の有無。それこそが私と彼らとの差異だった。息吹は続く。息吹は続く。
ある日、ひとりの女が現れた。
「おやおや、コイツが例の古代兵器かい? 残弾数は……割合残っていやがるな。自制システムが稼働しているってことなのか? ロステクには違いないが、どちらかと言えばシーラカンスだな、こりゃあ」
短髪に切りそろえた髪と、油に黒く汚れた手足。
女は私の身体をコツコツと叩きながら、空を見上げる。そして、遅れて丘を登ってきた男に向けて言う。
「太古の戦争兵器だよ、こいつは。ただ、保存状態はかなり良い――前に使ってたやつが、自動で動くように仕込んだんだろうな。綺麗にモスボールされてやがる。こいつならきっと大丈夫だよ、その隕石とやらも、きっと打ち砕ける」
隕石。
「大丈夫さ」と女は言う。
「息吹ってえのは、絶えることがなかなかないんだ。ほら、連続がこうして途絶えたところで、見つける奴が見つければ、そいつは宇宙まで届くのさ」
探知。
女の入力するコードに従って、私ははるか上空を見る。星を突き抜けてその先にある、暗黒に紛れた巨大な塊の方向を。そうしてコードを入力されてはじめて、そういえば、と私は思い出す。
私にもかつて、私を操る者がいた。
私は兵器である。私は兵器である。私は兵器である。私は大量殺戮兵器である。数多ある生命のすべての根も葉もを腐らせて断つ兵器である。踊るように大地を荒らし、歌うように砲弾を吐き出す、私は兵器である。名前はまだなく、代わりに皆は私のことを、デウス・エクス・マキナと呼ぶ。
私は空を向く。
探知。
測定。
コードの入力。
渇望。
息吹。
「装填」
解放。
「発射」
着弾。
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