リンカーネーション
まさか、俺が大罪人であるとあなたは想像できるか? 何の見識もない相手に、その嫌疑を向けることができるか?
できないというのなら、まあ、信じていないのだろう。俺は信じているが。
そうだな、俺が信じている人なんだというエピソードは何かあったか。ないかもしれない。ないなら捏造すればいい。今更である。ここはフィクションだぞ。肩抜けよ。
「なあ、森安。お前ってさ、あー。お前って死んだあとのこと、考えたことある?」
前の席に座る村重が、俺に深いことを聞いてきた。いかにも深そうで、ちょけたやつらの集まりで切り出すと哲学~~! って冷やかされそうなことだ。さすがの俺も、「え? 何? 哲学?w」といいそうになった。言いそうになったが、それをぐっとこらえていた。正直深い知り合いでもなければ、たまたま出席番号が連番なだけだ。こいつのことを大事にしてやる理由はない。無いので、俺は哲学と茶化す代わりに、一言だけを言い放った。
「ああ、遺書なら定期的に更新しているよ」
俺は、今、確実に村重のことを見下すことのできるポジションをとった! ははは! 不用意に後ろの席のやつに深いことを聞くからそうなるんだよ! 間抜け! 村重は死角から刺客が飛び出してきたような──とても上手い、気の利いたジョークだ──顔をしていた。何か考えていたことが少し吹き飛んだ顔だ。俺は攻撃が上手い。そうだ、上手いんだ。攻撃が上手いやつなら、この隙を逃す手だけは絶対にしねえ。そう、追撃だ。俺は、追撃を放つぞ、村重!!
「もし何か不慮の事故で死んだとき、あると無いとじゃ大違いだしさ。ないと迷惑かけちゃうかもしれないだろ」
村重は理解した。しただろう。俺は死んだあと、周りを気にするタイプだが、貴様は自分のことしか気にしていないと理解したのだーッ! 勝敗は完全に決した。俺は別に本当は遺書を書いてないし、死んでまで周りに迷惑をかけまくろうと思っている。思っているが、それはともかく。自分のエゴイストさを突き付けられた村重は、しかしなんと勇敢にもこちらに向かってきた……! こいつ、痛みでひるまねえのか!?
「森安。俺のことをぶってくれ。俺は俺のことばかり気にしていて、周りのことを気にしていなかった。そうだ、お前の言う通りだ。自分のことなんかより、俺も自分が死んだ後の他人のことを気にするよ」
なんと、村重は反省の意を示した。あまつさえ、俺にぶてと言った。普段ならば喜んでぶんなぐっていた俺であるが、しかしここで殴るのは相手の掌の上にあるようでためらわれた。
未完!!
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